風呂桶に座っていたあの頃の小さなお尻

 暑いのに冷たいということは本当によくあることだ。体の表面は熱を持ちやすい。そして今の私の心は冷めきってぬるぬると気持ち悪くなるような暗闇に置かれている。

 

 自分を変えているのが他人だということが癪に触ると前も書いたが、なぜか考えてみた。他人は変えられないという前提があるからだ。自分のものさしで人をはかるなと言われてから、あの子にイライラしなくなったように。なぜ私は他人へ影響を与えることができないのに他人は私を変えていくのか。これは主観だけど。主観的なものの見方が強い特性があるので仕方ないことにしておいてほしい。私ははっきり言って人からの影響を受けやすい。わかりやすすぎるほどにコロコロとなりを変える。もう少しどしっとしていたいものだ。そうしてどっしりと自分のスタイルを生きている人に憧れ、引きずられている人はたくさんいるのだろう。ヲタクというものがないと成り立たないことがあるときもあるけれど、ヲタクがどれだけ独自性を持って意識を操作できるようになるのか、はたまたできないのか見てみたい。

 

 インプットもアウトプットも足りないと感じる。私は最近音楽を仕事にできる妄想ばかりしている。見通しを立てるのがとても苦手でいつも飛躍している考えばかりが浮かぶ。でもどうしようもなく私は私の可能性を大きく見積もっているのだ。自分の持っているものを全てつぎ込むほどに熱狂していたあの頃のような熱を、求めている。熱、熱といったら、あの白熱した照明から発される熱をおびた肌、汗ばむ背中、暗くなる視界、大きな音、観客のなかにいる眠っているおじさん、全てをもってしてあの空気感は舞台でしか味わえない。

 

 この文章を書き始めて中断してから1週間以上経った。勢いよく書き始められたと思ったら急に手が止まってしまったのだ。そういうことはよくあることさ。と流してしまいたい。いや、流す。

 

 毎日変わりがなく慢性的な幸福の形をしたものに惑わされているような、目まぐるしく私が突き動かされているような、そんな、真逆の感覚を感じながら、いろいろな次元に思考を巡らせていた。本を3冊ほど読んだ。本はいい。こっちに一方的に語りかけてきてこっちの感想などどうでもいいのだ。その問いかけに応えられるか、その考察を深められるかは読者の力量によるものであって読者はこれを棄権する権利もある。わたしは3冊のうちの1冊を忌まわしく読み終わり、1冊は鮮やかな皮肉に苦笑いを浮かべながらも心を引き締め、最後の1冊を懐古と幸福と快感とともに読み終えた。最近はいろんな作家の本を読んだ方が考え方も広がるだろうと昔と同じように勘で表紙をみて選び取ってみているが、それが良かったといういわゆる当たりが減ってきている。本に優劣などつけられる立場にないがわたしにも合う、合わないはあるから、合うということが当たりという意味だ。当たりを引く運は思春期に使い切ったのかもしれない。私の思春期はまだ続いているという意見もあるが。

 

 もっと文章の密度を濃くしたいと思った。いつも私はなにか考えているようで考えていなくて、でもふとした感覚に涙が出そうになってそれを言語化して、メモできたらもうノーベル賞ものだ。長く書かなくてもいいから、自分も含めて読んだ人のお腹が少し満たされるような、そんな文章を書きたいと思う。私は左脳利きらしいのですぐに分析したがるらしい。その特性を活かしてみたりして分析してみるのもどうかなと考えている。本当に好きなことを分析してひとつにまとめるのって、なんだかどきまぎして、失敗は許されないなとヒヤヒヤして、閲覧したひとにこいつの愛はこんだけかとか思われるかもとふつふつして、なかなか、なっかなか行動にうつせない。でも書き直せばいいし、やり直せるし、更新し続ければいいのか。もっとインプットが必要だな、こう思うのはn回目だ。

 

 決められたテーマに沿って必要なだけの文章を書くのはできる方だと思うけど、こうやって自分の好きなだけ書けるときにいまいち文章のまとまりや流れが掴めていなくて、なんだかなあ、という気持ちになる。適度にどうでもいいことに対してはいろんな視点で考えられるし突飛な想像ができるから今まで役に立ってきたけれど、このままではダメだと思う。でも、だからって簡単には変えられるものではない。ダラダラと意味のないことを行間をわざわざ空けて書かなくなったことだけは認めてほしい。

 

 書きたいこと、思っていることがこぼれ落ちないうちに、あとどれだけのものを形にできるだろう。そう考えると、無限だと思っていたものが有限に感じられて、大切にしようと思いたくなる。すくった手からこぼれ落ちてしまった水は無意識という混沌に飲み込まれて、手に残る僅かな水も放っておけば蒸発し、自然へとかえってゆく。あー、スコップとか、風呂桶とかそういうのですくいてえな。